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第26話  

「で、秋元さん、俺に何の用なんだ?」森岡翔は尋ねた。

 「用事がないと、森岡さんに会っちゃいけないの?」秋元詩韻は聞き返した。

 「だったら、メッセージを送るか、電話をかけてくればいいだろう?どうしてわざわざ教室まで来たんだ?」

 「森岡さん、今、あなたの力になろうとしてるのよ!恩を仇で返さないで」

 「俺の力になる?どうやって?」森岡翔は尋ねた。

 秋元詩韻は少し考えてから言った。

 「森岡さん、考えてみて。この前の事件のせいで、今、あなたが大学に現れたら、きっとみんなこう言うわ。見て、あれが森岡翔よ。この前、彼女を奪われて、怒りのあまり血を吐いて倒れた男よって」

 「でも、私があなたに会いに来たことが知れ渡れば、みんな、あなたが血を吐いて倒れたことよりも、私たち二人が付き合ってるのかどうか、そっちの方が気になるはずよ」

 「どっちの噂の方が、あなたにとって都合が良いと思う?」

 森岡翔は考えた。確かに、その通りだった。

 「じゃあ、秋元さん、ありがとう」

 「お礼なんて、とんでもないわ。私の方こそ、高坂俊朗とのデートを止めて、たくさんのギフトを贈ってくれて、しかも、毎日ごちそうしてくれる森岡さんにお礼を言わなきゃいけないのに」

 「でも、秋元さん、こんなことして、自分の評判が落ちないか、心配じゃないのか?」

 「大丈夫よ。あなたに借りができたんだから」秋元詩韻は気にする様子もなく言った。

 森岡翔と秋元詩韻は、グラウンドを歩きながら、他愛もない話をしていた。

 しかし、秋元詩韻が教室まで森岡翔を迎えに来て、大人しく連れられて行ったという話は、どんどん広まっていった。

 大学は狭い世界だし、相手は三大美女の一人だった。

 噂が広まるスピードは、想像を絶するものだった。

 もちろん、これにはヒモ四天王の他の3人の活躍も大きかった。今の時代は連絡手段が発達していたので、ラインのグループチャットに投稿すれば、すぐに大学中に知れ渡ってしまった。

 最も早く、そして最も広く広まった噂は、3日前、高坂俊朗が森岡翔の彼女、相川沙織を奪い、森岡翔は怒りのあまり血を吐いて倒れた。

 そして3日後、森岡翔は、高坂俊朗が何ヶ月もかけて口説いていた秋元詩韻をモノにしたというのだ。

 高坂俊朗は、完全に面目を潰された。

 最初は、誰もこの話を信じ
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